五感と恩恵

　こんにちは。キャリアカウンセラーの藤吉です。

 

　アイキャリアビジョン地方は、春の陽気の中で花々や空の景色が美しく、鳥の声も様々聞こえるようになりました。

 

　こんな季節になるといつも思い出すマンガのセリフがあります。

 

　３０年以上も前の作品です。

　「はみだしっ子」と言うタイトルで、家出をした４人の子どもたちが放浪しながら成長する物語です。歳の順にグレアム・アンジー・サーニン・マックスという名の４人です。

　その中のアンジーがある時、人間や自分の罪深さを感じて落ち込む経験の後、木陰から小鳥が木の実を加えて飛んでいくのを見て「あは、可愛い！」と思うのです。そして、「”可愛い”って、おれの心まだそんなの感じるんだな」と泣き笑いで言います。

　それから数年後、「誰だってきっと楽しむことを思い出せるよ！」というアンジーのことを思い出しながらグレアムは思うのです。

　「おまえにとってはそれが救い。僕にとっては呪いだ。」と。

 

　グレアムは心の奥底に深い罪の意識を抱えていて、「かわいい、美しい」と思ってしまう自分を許せなかったのです。

　終章では仲間たちが居場所に落ち着いたことを確認した後、一人で自分なりの罪の精算をしに行きます。そこで・・・。続きはよろしかったらお読みください～💦
　ラストシーンは当時高校生だった私にはとても難解で、突然終わってしまったような気がしていたのですが、大人になった今ならすごく良くわかります。本当に名作です。

 

　今回このお話を書きだしたのは、冒頭に書いたように自然の美しさを感じた時、その美しさを感じることが出来ることにいつも感謝の気持ちがわいてくるからです。そして、この美しさを受け取ってもいいんだと思えている今にとても感謝しています。

 

　仕事がら、とても辛い想いをしている方にお会いすることがあります。

　ですので、心理学についても少し勉強をしています。

 

　心の問題と言うと、【心】や【考え方】だけに注目してしまいがちですが、実は身体に感じる感覚（五感）はとても重要です。

　鬱などの症状がある方は、「きれいな色、好きな色を想像して下さい」と言っても思い浮かばないとおっしゃる方が多いです。強いストレスで脳機能がうまく働かなくなってしまっているのですね。実際にきれいな景色を見てもきれいと感じられないこともあります。

　そういう時には、頭よりも身体が先に感じることが大切です。

 

　テーブルに手をつけてみて、冷たいと感じる。

　太ももに手を当ててみて、暖かいと感じる。

　部屋の中を歩いてみて、足の裏の感覚をしっかり感じる。

　お茶を飲むときに、鼻先にお茶の香りを感じる。

　窓を開けてみて、風が顔に触れるのを感じる。

 

　そんなことを繰り返して、人間に本来備わっている体感覚を取り戻していくのです。

　そして外を眺めるようにしましょう。お天気だなとか雨だなとか思えるようになったら、自分の意識が外に向いてきた証拠です。そのうちに空がきれいだなとか、雨音が落ち着くなとか感じられるようになるでしょう。

　そうして、感覚を取り戻して来たら自分の身体にも意識を向けてみると良いです。それまで気づいていなかった部分が緊張しているかもしれません。緊張に気が付いたら、そこに意識を向けながらゆっくりと呼吸を吐き出せば、出ていく呼吸と共にじんわりと緊張がほぐれてきます。

 

　なかには、グレアムのように自分から感じることを許さないと（無意識に）誓ってしまっている人もいます。

　そんな方にもぜひ、体感覚から取り戻していただきたいのです。

 

　自然は私と言う人間に関係なく、春になれば芽吹き、季節が変わって新緑になり、冬に枯れて眠りにつきます。

　暖かい太陽も災害も、人を選びません。

 

　私たち人間は自然の一部で、呼吸をして酸素を取り込み、食事をして栄養を採りこみエネルギーにして活動するように作られています。

　理由はわからないけれど、そういう人間として私たちは生まれて生きています。

　そうして、必ず誰かとつながっていて、つながる相手を選ぶこともできるし、幸せにしたい人を笑顔にすることもできます。

 

　自分の心や行動がどうあれ、この身体は、なぜかどこかから賜ったものでした。

 

　そして私たちは、いろいろな状況の変化の中で、考えて選ぶことができるよう生まれてきました。

　その選択がある時間違ったように感じても、あるいは本当に間違っていたとしても、私たちを含んだ自然も周囲の人々の生活も続いていきます。

　良いも悪いもお互いに影響を与えながら。

　それならば、同じ過ちに縛られず、誰にでも与えられている恩恵を受け取って、自分に出来る限りの生活を営みながら、どこか誰かに返していくことを選ぶこともできる。

 

　そんなことを思い出す季節なのでした。

by　篠扶